乳がんの現状

乳がんは、女性の約9人に1人*が生涯で乳がんを患います。
(*全国がん登録罹患数・率報告2017年「累積罹患率」10.6%)

40代と60代に発症のピークがあり、40代~50代女性のがん死亡原因の第1位と働き盛りの女性にとっては大変大きな心配事となっています。20代の罹患者数は低い傾向にありますが、乳がん検診を受診する人たちが多いわけではなく、油断は禁物です。

一方、乳がんは治る病です。ステージ1で乳がんが見つかった場合の5年生存率は95.2%と早期発見により適切な治療が行われれば、良好な経過が期待できます。
(*国立がん研究センターがん対策情報センター「2010-2011年5年生存率集計報告書」)

乳がん検診の課題について

いま乳がんの検診は、主に「マンモグラフィ」という乳房専用のレントゲン検査を行います。透明の圧迫板で乳房をはさみ薄く伸ばして撮影するため、痛みを伴うことも少なくありません。

また、日本人に多い高濃度乳房(Dense breast)*がマンモグラフィの読影を困難にしており、正確な診断が下せないという問題もあります。このようなことから「がん検診・健診・人間ドック」からの乳がんの発見率は、24.7%*に留まっています。(*全国がん登録罹患数・率報告2017年「発見経緯」)

*高密度乳房(Dense breast)とは、マンモグラフィーで用いられる定義です。
乳腺組織は、X線が透過しにくいので、X線画像では白く写ります。一方、脂肪組織は透過しやすく黒く写ります。高濃度乳房の場合、高い密度で白く写る乳腺組織のために、乳がんのしこりなどが発見されにくくなります。

任意型検診で超音波検査を併用することで、発見率が上昇するとの報告があります。ただし、超音波検査の併用で死亡率減少効果があるかどうかは、いまだ分かっていません。また、追加の費用も必要です。
(*マンモグラフィと超音波による乳がん検診の感度、特異度 J-START結果報告, 大内憲明ら、Lancet 2016, 387, 341-348.)

また、「早期発見」のため、自治体は行政が費用負担のもと、40歳からのマンモグラフィでの検診を勧めていますが、受診率は約40%と低迷しています。このような状況から、乳がんの早期発見を増やすためには検診精度と検査方法の改善が必要だと私たちは考えました。

TearExo法について

「病院に行かず自分で簡便にがんリスクを管理できる新たながん検出の開発」ができれば、検診精度と検査方法を改善できるのではないかと考え、涙で乳がんを検出する方法の開発をはじめました。

すでに測定装置のプロトタイプは完成し、従来用いられていた免疫測定法の1,000倍もの高い感度を達成し効果も認められています。

測定装置のプロトタイプを用いて涙を検体としてエクソソームを測定したところ、涙の中のエクソソームを正常に測定でき、乳がん患者とがんがない方のエクソソームの違いも判別することができました。

つまり、乳がんの可能性があるないかが高い精度で確認できるようになったのです。

さらに、乳房全摘手術を受けられた患者さんの術前と術後での涙の中のエクソソームは異なることも確認できました。

あくまで予備実験の範囲ですが、涙で乳がんが検出できる可能性があると考えています。

さらに、術後は健常人と同様のエクソソームが検出されたことから、乳がんの検出のみならず、薬物療法の効果、術後の管理、再発リスクのチェックなどの役割でも使用できる可能性が高いのです。

今後は以下のようなプロセスで2021年には臨床研究の規模を拡大し、22~23年度中に体外診断薬としての認可申請を目指します。最終的には好きなタイミングで定期的に、そして容易に検査できるようにしていきたいと思います。

神戸大学医学部附属国際がん医療・研究センター

TearExo法の使用方法 / 測定手順

使用方法は、ドライアイの検査に用いられる「シルマー試験紙」と呼ばれる小さくて薄い短冊状のろ紙片を、目じりに置き、数分目をとじて涙をしみこませます。これだけです。

このろ紙片をエクソソーム回収溶液に浸し、涙に含まれるエクソソームを回収し、そのまま自動分析装置で分析します。

鏡を見ながら自己採取も可能ですので、検査のハードルは大きくさがることが期待されます。最終的には、ご自宅で採取したものを検査機関に送ってもらうようなことができれば、病院に行く必要もなくなります。

(測定手順)

TearExo法に関する原著論文

これらの研究成果は、ドイツの化学系トップジャーナルAngewandte Chemie International Edition、および米国の化学系トップジャーナルJouranl of the American Chemical Societyにジャーナルカバーイメージとともに掲載されました

Angew. Chem. Int. Ed. 2019, 58 (6), 1612-1615. DOI: 10.1002/anie.201811142

Mori, K., Hirase, M., Morishige, T., Takano, E., Sunayama, H., Kitayama, Y., Inubushi, S., Sasaki, R., Yashiro, M., Takeuchi, T. A pretreatment-free, polymer-based platform prepared by molecular imprinting and post-imprinting modifications for sensing intact exosomes.

J.Am. Chem. Soc. 2020, 142, 6617-6624. DOI: 10.1021/jacs.9b13874

Takeuchi, T., Mori, K., Sunayama, H., Takano, E., Kitayama, Y., Shimizu, T., Hirose, Y., Inubushi, S., Sasaki, R., Tanino, H. Antibody-conjugated signaling nanocavities fabricated by dynamic molding for detecting cancers using small extracellular vesicle markers from tears.

そのほかの研究

工事中

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